

人事賃金制度改革の重要点
1. 3つの目的を達成する

2. 人事ポリシーを確立する
人事給与制度構築の前提条件として、「人事ポリシー(人事政策)の確立」があります。
人事ポリシーは、「組織の求める人材像を創造するための基本政策(ポリシー)」であり、
@年功主義
A能力主義
B実力・成果主義
の三つに大きく分けることができます。
@年功主義は、年功序列制や終身雇用制を基本とする人事ポリシーです。
この考え方は、「年齢が上がると必ず能力が上がり、能力は必ず成果に結びつく」という前提から成り立っています。現行のような急激な構造改革の中で新たな能力が求められている日本企業の場合、適用が困難になっている人事ポリシーでもあります。
A能力主義は、職務遂行能力(職能)を軸として、各人事システム(採用・配置・退職、評価、報酬、教育訓練など)を連動させる(これを人事トータルシステムという)人事ポリシーです。
能力主義は、「能力は必ず成果に結びつく」と考えているため、「能力が高くても行動しない人材=成果を出さない人材」も評価してしまう側面を持っています。
「職能」の定義も暖味であり、年功的運用にならざるを得ないことも事実です。
B実力・成果主義は、実力主義と成果主義を合わせた人事ポリシーです。
成果主義は結果主義であり、定量的数値目標などを設定して、その達成度合いを評価します。
この目標は、病院の成果を達成するためのものでなければならず、まずは病院全体としての成果を決定する必要があります。
病院全体の成果目標が決定した後、その目標を達成するための各部門や個人の目標値を決定していきます。
最近、これらの目標を決定する際にバランス・スコアカードの枠組みを活用するケースも多くなっています。
この成果主義は、様々な問題点が指摘されています。
具体的には、「結果さえ出せば、その途中の過程はどうでもよい」という状態になりがちであり、短期的成果の追求、不正な手段による成果の追求につながる危険があります。
これを防止するため、成果主義と実力主義の併用が行われています。
実力主義とは、成果(結果)に至るプロセス(原因)を評価する原因主義であり、「良い結果は良い原因(思考・行動特性)に起因する場合が多い」という考え方から成り立っています。
「実力」とは、「成果につながる思考・行動特性」を示しており、能力だけでは成果に結びつかないため、「能力をともなった行動=実力」で評価しようとするものです。
この「能力をともなった行動=実力」を測るために、コンピテンシー評価が採用されます(枠組みは職能資格制度と類似している)。
人事賃金制度改革にあたり、第一に意思決定すべきことは、
「人事ポリシーをどうするのか」
ということです。
人事ポリシーが確定していない状況において、新しい人事賃金制度を具体化しようすると、様々な可能性が考えられるため、収拾がつかなくなる危険があります。
@年功主義・A能力主義は、成果主義と組み合わせることも可能です。
年功主義のみでは組織の活性化を図ることができないため、賞与の全部あるいは一部に成果給(業績給)を導入している病院も多いです。
整理すれば、病院の人事ポリシーの選択肢としては、
@年功主義
A能力主義
B実力・成果主義
C年功・成果主義
D能力・成果主義
があることになります。
職種によって異なる人事ポリシーを採用するケースもあります。特に、医師については、C年功・成果主義をベースとして、役割給も加えながら年俸制を導入することも有効な場合が多いです。
人事ポリシーを決定すれば、次のステップとして、複線型雇用制度や目標マネジメント制度などの各ツールの活用、人事システム(採用・配置・退職、評価、報酬、教育訓練など)の整備を検討していくことになります。
複線型雇用制度や目標マネジメント制度などはツールであり、全ての人事ポリシーの下で活用できるものであることにも留意が必要です。

3. 人事賃金制度改革のメニューをクライアントとともに確認する
人事賃金制度改革は、全体像を把握して推進することが重要です。
財務の中長期シミュレーションを実施しなければ、総人件費の今後の許容額を把握することが困難です。病院全体の具体的・定量的目標が設定されていなければ、業績給や評価制度の基準を策定することも難しいです。
人件費の適正化を目的として給与体系の見直しを図る場合は、
「職員数が多すぎるのではないか」、
「節減できる時間外手当がかなりあるのではないか」、
「パートや派遣職員を活用してはどうか」
などの理由により、「給与体系の見直し前に病院としてやるべきことがある」などの反対意見が職員から出されることが多く、これらの視点についても整理が必要です。

4. 必ずしも詳細な職能資格等級制度が良いとは限らない
一般的な職能資格等級制度は、詳細な職能給表の構築や運用が複雑になるとともに、年功序列的な運用となり、総人件費が高騰するというデメリットがあります。
非役職者は時間外手当が支給されるため、役職者と非役職者の賃金が格差なく、役職者のモチベーションが低下するというデメリットが発生している病院もあります。
人事考課制度が未成熟の中、毎年の評価結果が病院に在籍する限り、影響するというリスクもあります(誤った考課は退職まで影響する)。そのため、等級と号俸で構成する基本給表を作成し、「等級=職位(役職)」として位置付けて、等級ごとの号俸の数を一定数に留めるという方式で運用している病院も少なくありません。