●第1話●

「新任事務長、経営改革のスキームを語る」の巻


                                      作者:石橋賢治




〜あらすじ〜
  関東地方に立地し、病床198床(一般病床148床、療養50床)の民間病院である。2010年度から収支が悪化し、2011年度の当期損益は適に2億円の赤字にまで落ち込んだ。この危機的状況を打開すべく、院長は本年6月より昨年度に前任者が退職して空位になっていた事務長職に経験豊富な人材を外部から迎え入れた。
注)この病院は架空の病院ですが、本稿の経営改革をはじめとする会話の内容は実在する病院の経営改善事例及び筆者の病院職員やコンサルタントと しての体験にもとづいています。

■この物語は、雑誌「フェイズスリー」(掲載期間:2006年7月〜2008年7月)に掲載していた内容を一部編集しております。
■私たちの業務は新任事務長の業務となります。


              〜事務長就任後 最初の幹部会議の場面〜


  • すでに経営改善に取り組んでいると聞いたのですが、どんなことをやっているのですか?
  • 患者アンケートを昨年から実施し、患者満足度などを測定しているんだ。職員も接遇などの強化の必要怪を認識しはじめているようだよ。患者アンケートを昨年から実施し、患者満足度などを測定しているんだ。職員も接遇などの強化の必要怪を認識しはじめているようだよ。
  • それだけですか。


  • 2006年度収支計画も作成しました。病床利用率90%、1日あたり外来患者数400人を達成すれば黒字になることがわかり、職員全員に通達したところです。


  • その病床利用率や1日当たり外来患者数をどうやって達成するつもりですか? 具体策はありますか?
  • それは、職員が意識改革をすれば可能だと思います。


  • それで今年の4月・5月の実績はどうでしたか?


  • 両月ともに利用率78%、外来患者数300人程度でした。だまだ、意識改革が足りないようですね。


  • その結果を職員に報告しましたか? 反省はしないのですか?


  • 前事務長が反省は嫌いだったもので…。


  • 韓国の人気ドラマの 「チャングムの誓い」でこんなセリフがありました。「『反省』 の真の意味は『責任をとること』」だと。責任を取らない幹部など幹部ではない。 
  • 責任とは辞職することですか?


  • 「対応策を講じる」 ことが、責任の最初の取り方でしょう。どうも、当院には本当の意味での計画やマネジメント体制が確立されていないようですね。


  • 私も「これではいかん」と思い、BSC(バランスト・スコアカード)研修会なるものに参加したのだが、職員全員が理解するのは難しく、部門単位や個人レベルの戦略マップ作成などはとても当院では無理だと思い、諦めたところなんだよ。


  • 確かに理想型をめざせばキリがありませんが、BSCは必ずしもシステマチックにやる必要はなく、枠組みだけを活用することもできます。


  • 職員が 「BSC」という言葉を知らなくてもいいのかね?



  • そうです。キーワードは言霊になる場合もありますが、逆に煩わしさをもたらす場合もあります。「その組織にとっての真実」を見極めることか必要です。ここで皆さん2つ質問させてください。ひとつは、「経営改革」「経営健全化」とは何か?もう一つはトップマネジメントの役割とは何か。


  • 「経営改革」「経営健全化計画」とは、患者アンケートなどによって職員が意識改革し、収入などが改善すること。トップマネジメントの役割は、企画力・行動力の発揮でしょう。


  • 話が抽象的過ぎて、経営改革に結びつくとは思えません。それでは「職員の意識改革」って何ですか?

  • ・・・。


  • 「職員の意識改革」とは、現状とあるべき姿のギャップを職員が認識して、その解消、少なくとも縮小をめざす必要性を感じて行動することだと私は考えています。そのためには、あるべき姿を示さなくてはならない。あるべき姿があってギ専ツプを認識できるのですから。


  • 「あるべき姿」 ってどういうものでしょう…。


  • 看護師巻中途採用津る場合に、忌貝院の医療機能はどのような内容ですか」とよく聞かれるげ澄、そういうことでしょうか。

  • それも一部分です。今回は 「あるべき姿=計画」と考えましよう。


  • 収支黒字、病床利用率90%、1日当たり外来患者数400人、ということですか?

  • それでは内容が不十分です。@戦略、A目標、Bアクションプランの3つに分けて整理するのがシンプルでわかりやすいと、私は体験から確信しています。職員アンケートの結果を見せてもらいましたが、給与という個人の問題を除けば職員の疑問も正に、この3つに集約されます。
  • 1病院の戦略 自分たちの病院は、今後どのような方向(機能・規模、運営体制など)を目指していくのだろうか?
    2病院の基本目標 「ガンバレ、ガンバレ」と言われるが、何をどこまで頑張ればいいのだろうか?
    3病院のアクションプラン 上記の戦略や基本目標を実現するために、明日から自分たちは具体的に何をすればいいのだろうか?
  • さまざまな調査や分析は、どう考えればいいのですか?

  • 計画を策定するためのデータ、エビデンスです。調査や分析のみで経営が改善錬るわけがありません。

  • 近隣の病院では、経営コンサルタントに委託じて経営診断報告書をもらったという話だが…。

  • 調査や分析は一通り済んでいるようなので、今回は自分たちでやりまじょう。それに、経営診断報告書の内容は、病院とコンサルタントの意見交換の結果としての提言ではないことが多く、報告書の内容を改めて病院内部で議論して計画に落とし込まなければならず、非効率になるケースが多々あるんです。
  • 「経営診断報告書が攻をかぶっている」という話はよく聞きますねぇ。
  • そうです。コンサルタントには報告書ではなく、少なくとも病院の意思決定の結果である計画策定まで関与しでもらうべきです。最近は、計画の進捗管理や実行支援を委託するケースも増えてきているようですよ。

  • その計画は、半年くらいかけて策定するのでしょうか?


  • この非常事態において、そんな悠長なことでは困ります。計画が完成したころには、病院が倒産したり、職員が病院から離れていってしまったりしては万事休すです。カルロス・ゴーン氏は、あれほどの大企業である日産の再生計画を3カ月で策定したのですよ。当院は1カ月半で策定します。
  • 計画の柱である、@戦略、A目標、Bアクションプランの具体的内容や導き方について聞きたいのだが…。


  • そうですね。でも、あるべき姿と現状のギャップを明確化することが経営改革の始まりであり、まずは現状を正確に認識することが必要です。
    では次回、収支面の現状認識の方策である 「財務分析」 の内容や計画への落とし込み方法を議論しましょう。


●第1話おわり●


上へ



3.経営健全化計画の内容(病院職員が抱えている3つの疑問に答える)


1病院の戦略 自分たちの病院は、今後どのような方向(機能・規模、運営体制など)を目指していくのだろうか?
2病院の基本目標 「ガンバレ、ガンバレ」と言われるが、何をどこまで頑張ればいいのだろうか?
3病院のアクションプラン 上記の戦略や基本目標を実現するために、明日から自分たちは具体的に何をすればいいのだろうか?

病院幹部が中心となって、
@上記3つを整理(計画)
A職員に開示するとともに参画を促
B計画の実現に向けた進捗管理を実行し、
計画を実現することが「経営改善」「経営健全化」に他ならない。


  • 調査・分析の結果をデータとして、経営計画を策定し、実現することが、「経営改革」「経営健全化」にほかならない
  • 経営計画は、@戦略、A目標、Bアクションプランにを柱として整理することが有効である。











上へ











Copylight(c)2011〜FUJIMIZAKA LABORATORY OF HOSPITAL MANAGEMENT All Rights Reserved