

〜前回あらすじ〜
2011年度の当期損益が2億円の赤字にまで落ち込んだJMP病院
(民間病院)は、経験豊富な事務長を外部から迎え入れた。「調査・分析の結果をデータとして、経営計画(@戦略、A目標、Bアクションプランから構成)を策定し、実現することが、『経営改革』『経営健全化』にほかならない」と、事務長は幹部会議で力説。財務分析の結果から改善の着眼点を導き出した。
注)「A病院」は架空の病院ですが、本稿の経営改革をはじめとする会話の
内容は実在する病院の経営改善事例及び筆者の病院職員やコンサルタントと
しての体験にもとづいています
〜幹部会議の場面〜
CF(=当期損益+減価償却費)を構成する要因は、入院収入・外来収入、室料差額収入、人件費、材料費など、幅広くあるわけか。
当院の過去の実績や同規模・同機能の他院との比較では、それらの要因はすべて劣っており、改善が必要と考えます。要因ごとの一般的対応策は図1のとおりで、今後、当院がどのように対応すべきかを決定しなければなりません。
特に、患者数や診療単価の改善など、入院収入や外来収入を向上するには診療機能の再構築が必要だと思うのですが、これが経営計画の柱の一つである「戦略」ということでしょうか?
「戦略=病院の診療機能や規模」として整理することも可能ですが、それだけではありません。
人事も立派な戦略だと思います。
物流や広報も戦略の一環では?
確かに人事戦略、物流戦略、広報戦略という言葉があるな。
経営学では、@全体戦略、A事業戦略、B機能戦略Iの3つのレベルで戦略を区分するのが一般的ですが、両課長の指摘された項目は、いずれも機能戦略に該当するものです。
当院の経営計画では、戦略をどのように整理するつもりかね。
私は、「環境変化に適応し、持続的競争優位性を確保するための基本枠組み」と自分なりに戦略を定義しています。基本枠組みなので機能戦略までを含め、「改革方針」のような位置づけで括りましょう。
そうすると、さまざまなものが混在してわかりにくくなりませんか?
ちょっとした工夫をするのです。具体的には、図2のように戦略を3つに区分します。

なるほど。診療機能や診療体制を急性期関連とそれ以外に分け、機能戦略を「診療体制を支える組織戦略」として括るのは、わかりやすいわね。
自分なりの定義を持たないと、キーワードは使いこなせないのですね。
同感だ。いろんな意味で有意義な幹部会議になってきたようだ。ただ、図2は戦略の全体像だよね。具体的には、どのように整理するの?
項目ごとに、@方針A方針の策定の理由B方針を実現する行動計画にわけて整理します。
方針の策定の理由があるのがいいわね。理由がないと職員は納得しないだろうし。
方針策定の理由には、内部環境や外部環境などさまざまな視点があるように思いますが
戦略策定にあたっては、@どうなりたいか(主体的意志) Aどうなるべきか (外部環境) Bどうなれるか(内部資源)1の3つの視点を考慮する必要があります。
主観と客観の両面から整理しているわけだな。「どうなりたいか」の主観を把握するために私たちや各診療科・各部門にヒアリングを実施したわけか。
ヒアリングは「どうなれるか」の部分でもあります。
需要・競合機関調査は、主に「どうなるべきか」の部分で活用されたわけですね。
この戦略は何年くらいで見直しをかけるのかしら?
適宜、微調整はしますが、基本的には3年間維持するため、「中期ビジョン」として整理することもできます。
「中期ビジョン」として、戦略だけを20ページ程度の冊子にまとめれば、職員の採用面接時に「当院はこういう病院よ。めざす方向が同じなら働いてみない?」とはっきりと伝えることができますね。
そうです。病院の方向性を明確に示すことが看護師確保にもつながります。●第3話おわり●